「iDeCoは最強の節税対策だから、限度額いっぱいまでやるべき」
以前の私はそう信じて、個人事業主の掛金上限である月額68,000円を設定していました。
所得税・住民税の節税効果は絶大ですし、「老後資金はこれで安泰」と思い込んでいたのです。
ですが最近、ふと「今の私にとって、これは本当に正解なのか?」と立ち止まりました。
- 毎月の投資額が家計を圧迫していないか?
- これから来る教育費のピークに、資金が拘束されていて対応できるか?
- 出口(受け取り時)で多額の税金がかかり、節税効果が相殺されないか?
現状の資産と今後のシミュレーションを重ねた結果、私は「掛金を月1.5万円に下げる」という決断をしました。
これは単なる減額ではなく、「出口で数万円の税金を許容してでも、最終的な手取りを最大化する」ための戦略的な変更です。
なぜ6.8万円ではなく「1.5万円」が最適解だったのか? その詳細なシミュレーション結果を公開します。
1. 「節税の罠」と「20年の壁」に気づく

iDeCoの最大のメリットは「掛金が全額所得控除になる(節税)」ことですが、実は「受け取る時」に税金がかかる可能性があることは、知っていてもあまり深く考えられていません。
退職所得控除の「20年の壁」
iDeCoを一時金で受け取る場合、「退職所得控除」という非課税枠が使えます。しかし、この控除額は加入期間によって大きく変わります。
- 加入20年以下: 1年あたり40万円
- 加入20年超 : 1年あたり70万円
私がiDeCoを始めたのは2023年末(当時43歳)。もし60歳で受け取るとなると、加入期間は16〜17年程度しかありません。
もし月6.8万円を年利5%で運用し続けると、60歳時点での資産額は約2,000万円近くになる可能性があります。
これでは控除枠(約600〜700万円)を大幅に超えてしまい、受け取り時に数百万円単位の「課税所得」が発生してしまいます。「入口で節税した分を、出口で返済する」ような事態になりかねません。
2. 検証:「無税」か「利益最大化」か?

そこで私は、2つのパターンでシミュレーションを行いました。(※受取は加入期間を20年以上にするため65歳と設定)
- パターンA: 60歳以降、掛金を最低額(5,000円)に下げて、出口の税金を「完全ゼロ」にする
- パターンB: 65歳まで月1.5万円を続けて、所得控除(節税)を取り続ける
衝撃のシミュレーション結果
私の条件(現在45歳、NISA併用、年利5%想定)で計算したところ、意外な結果が出ました。
- パターンA(無税狙い):出口の税金:0円
- パターンB(1.5万円継続):出口の税金:約3万円(わずかに控除枠をはみ出る)
しかし、実質手取り額:パターンAより約50万円多い
なぜ「税金を払った方」が得をするのか?
パターンBでは、出口で約3万円の税金がかかります。しかし、65歳まで掛金(1.5万円)を拠出し続けることで、現役時代の「所得税・住民税」が安くなる効果が続きます。
この「毎年の節税メリット」の積み重ねが、最後に払う「わずかな税金」を大きく上回ったのです。
結論として、私は「完全に税金ゼロ」にこだわらず、「月1.5万円」を続けてトータルの資産を最大化する道を選びました。
3. 「攻め」から「守り」へ。新ポートフォリオ

iDeCoの掛金を6.8万円から1.5万円に減らして浮いた資金(5.3万円)はどうするか?
ただ消費するのではなく、より柔軟性の高い資産へ振り分けます。
変更前(iDeCo偏重)
- iDeCo: 68,000円(資金拘束:強)
- 新NISA: 30,000円
- 現金: 残り
変更後(バランス型)
- iDeCo: 15,000円(節税メリットと出口戦略のバランス最適解)
- 新NISA: 50,000円(いつでも引き出せる教育・防衛資金)
- 現金: 増額(直近の生活防衛と事業資金)
なぜNISAと現金を増やすのか?
我が家には小学生の子供がおり、これから数年以内に教育費の支払いピークが訪れます。
その時、「資産はあるのにiDeCoだから引き出せない」というのが最大のリスクです。
NISAなら、いざという時に学費として一部売却することも可能です。
「節税メリット」を少し捨ててでも、「いつでも使える自由(流動性)」を手に入れる。
これが個人事業主としての私のリスク管理です。
まとめ:あなたにとっての「適正額」は?

「iDeCoは満額やるべき」という常識は、加入期間が長い人や、資金に余裕がある人には正解かもしれません。
しかし、私のように途中から始めた人にとっては、必ずしも正解とは限りませんでした。
今回のシミュレーションで、私は「出口で数万円の税金を払ってでも、手元資金の自由度を高めつつ、トータルで50万円多く残す」という自分なりの最適解を見つけられました。
もしあなたも「なんとなく満額」を続けているなら、一度立ち止まって「出口の税金」と「トータルの手取り」を計算してみてはいかがでしょうか。
【重要】法改正とライフプランの変化について
本記事のシミュレーションは、2025年12月時点の税制に基づいています。
今後、iDeCoの制度変更(退職所得控除の見直し等)や、私自身の働き方(法人化や会社員への転身など)が変われば、最適解も変わってきます。
「一度決めたら放置」ではなく、法改正やライフステージの変化に合わせて、その都度柔軟に配分を見直していくつもりです。
投資はあくまで自己責任。ご自身の状況に合わせて判断してくださいね。
【追記】
実際にSBI証券で掛金額を変更する手続きについては、こちらの記事で画像付きで詳しく解説します。


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